なぜ日本でイノベーションが起きないのか

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日本にイノベーションが起きないのはなぜか 働き方

アメリカには、イノベーションを起こしてきた企業がたくさんあります。マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグルなど、西海岸のシリコンバレーを中心に枚挙にいとまがありません。翻って日本はどうでしょうか?かつてはホンダやソニーといった企業が世界を席巻してきましたが、最近ではほとんど聞きません。今回は日本でイノベーションが起きにくい理由を探ってみたいと思います。

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Twitter元副社長のHarvard Business Review記事

Twitter元副社長のHarvard Business Review記事

Twitter元副社長のブルース・デイズリーが、2020年3月のHarvard Business Reviewに「Don’t Let Your Obsession with Productivity Kill Your Creativity」という記事を投稿しました。「生産性に執着するあまり創造性を失わないように」という意味の投稿です。興味のある方は、リンクを貼っておきますので読んでみてください。

Don’t Let Your Obsession with Productivity Kill Your Creativity

ブルース・デイズリーはこの記事の中で、生産性が創造性をなくす可能性について触れています。生産性と創造性が対極にあると考えているようです。生産性を上げる事例として、To-Doリストを挙げています。生産的な1日の始まりは「早起きしてTo Doリストの項目をチェックしてから、実質的な作業を行う前に防弾コーヒーのトリプルショットを飲むことから始める」という比喩を使っています。

防弾コーヒー(bulletproof coffee)とは、バター入りのコーヒーのことで、ダイエットにも効果があり朝から頭が冴え渡ると言う人もいます。バター入りのコーヒーで本当に生産的な仕事ができるかどうかわかりませんが、要は冴えた頭でやるべきことをはっきりさせようという趣旨です。

一方で創造的な1日は「夢のように空を見つめて、ペンを傾けて絵を描く」とのことです。なんとなくぼーっとして、絵を描いたり音楽を聴いたりするといった感じでしょうか。

私たち日本人からすると、朝からコーヒーを飲んでTo-Doリストをチェックして仕事を始めるというのが腹落ちするパターンではないでしょうか。そうです。日本人は、To-Doリストがとても好きな民族なのです。

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日本人の好きなPDCAサイクル

日本人の好きなPDCAサイクル

日本人がもう一つ好きなものがあります。それはPDCAサイクルです。おそらく会社に入ると、新入社員研修などで「仕事をする時は、必ずPlan(計画)、Do(実行)Check(評価)、Act(改善)のPDCAを回しなさい」と教えられると思います。この習慣は、何十年も日本企業に根付いています。

このPDCAサイクルは、戦後の日本が経済成長を進めてきた力の根源の一つと言えるかもしれません。しっかりとした計画を立てて、その計画通りに物事を実行し、結果を厳密に評価して、次の改善活動につなげるというものです。特に工場などの現場では、周りから口を酸っぱくして言われているフレーズだろうと思います。

1980年代くらいまでは、日本のこのPDCAサイクルをベースにした現場力が世界をリードしてきました。そして世界第2位の経済大国へと進んできたわけです。この時代は、物を作れば売れた時代でした。バブル経済もそれを後押ししてきました。このため、日本人は大きな成功体験を得たと言えます。

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成功体験が仇になる

成功体験が仇になる

しかし、1990年代からはガラッと様相が変わります。前述のようにマイクロソフトやアップルという新興のIT
企業が力を伸ばしてきます。これまでハードウエアを中心に日本企業は成長してきましたが、アメリカのIT企業はソフトウエアという新しい武器を手にしてどんどんと力を付けてきます。

ご存知のように、マイクロソフトもアップルもアメリカ西海岸を発祥の地とする企業です。自由でのびのびとした環境で新しい発想を次々と生み出してきました。それが2000年代に引き継がれてきて、アマゾンやグーグルという極めて革新的な企業が次々と現れます。先ほど登場したブルース・デイズリーが在籍していたTwitterもそんな企業の一つですね。

日本企業は、1990年代以降からなんとなく違和感を感じ始めます。これまでPDCAサイクルを回していれば業績が伸びていたはずなのに、それがうまく行かなくなってきたからです。しかしそれを改めようとする企業はそう多くなく、従来通りPDCAサイクルのみを一所懸命に回し続けました。不幸なことに、過去の成功体験が仇になってしまったと言えるでしょう。

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日本人の特性

日本人の特性

よく言われる日本人の特性として「真面目」ということがあります。とにかく真面目です。言われたことはしっかりやるし、仕事をする時は一心不乱に集中してやります。これがPDCAサイクルを回すのにはぴったりだったのでしょう。

この真面目という日本人の特性は決して悪いことではありません。しかし時々、「くそ真面目」になってしまいます。残念ながら、これが足を引っ張ることもあります。

例えばオフィスは神聖な場所なので、コーヒーを飲みながら、あるいは音楽を聴きながら仕事をするとはけしからん、という風潮です。日本のオフィスでは、家族の写真を飾ったり、趣味のフィギュアを机に置いているような人はあまり見ません。しかし欧米人の中では、一般的に行われています。

欧米人は仕事をしていても、他のことを考えていることが多いのです。好きな音楽のこと、好きなスポーツ選手のこと、週末の予定など。日本人はこんなことをしていたら、すぐに上司から「ぼーっとしてんじゃねーよ」と怒られますね。

この違いは何なのでしょうか。私は、やはり日本人の特性が関係していると思っています。日本人は「真面目」なために、「これ」と決めたらその枠からはみ出すことをあまり好みません。多様性を受け入れづらいというところにも繋がっていると考えています。

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イノベーションを起こすためのキーワード

イノベーションを起こせるのはどっち?

自由闊達に物事を考えて色々なものから刺激を得ている人と、真面目にコツコツとTo-Doリストに沿ってPDCAサイクルを回している人。どちらがイノベーションを起こせるでしょうか。これまでの文脈からすると、答えは明らかですね。

私なりにイノベーションを起こすためのキーワードを整理してみました。

  1. 自由な発想
  2. 趣味や文化など幅広い興味
  3. 人とのコミュニケーションから生まれる新しい考え
  4. PDCAだけではなくOODA
  5. スピード感

自由な発想

これは、これまでも述べてきた通りです。ある「物事の枠」にとらわれない自由な発想がイノベーションの起爆剤になるのは間違いないと思います。日本人はこれがかなり苦手です。何かを質問しても、ステレオタイプ的な答えが返ってくることが多いことからも頷けます。

自由な発想を生み出すにはどうすればいいでしょうか。まずは環境を変えてみるということだと思います。最近では日本企業でも、新しい働き方ということでオフィス環境を変えるようなケースが増えています。それも一つのきっかけにはなると思います。

ただ、それだけではダメで、そこにいる人間が変わってゆく必要があります。とんでもないようなことを「ダメ」と言わないで、まずは受け入れるという多様性を身につけるということではないでしょうか。

趣味や文化など幅広い興味

多様性を身につけるためには、色々なことに興味を持つことが重要だと考えています。それは何も仕事に限らず、趣味や文化的なことも含みます。日本人は仕事は仕事、趣味は趣味と分けて考える傾向が強いと思います。しかし仕事も趣味も一人の同じ人間がやることですから、分ける必要は全くないと思います。

色々なことに興味を持ち、趣味や文化的な活動で脳に刺激を与え続ける。そうすると仕事でも新しい発想が出てくるに違いありません。

人とのコミュニケーションから生まれる新しい考え

やはり新しい考えというのは、人との議論などのコミュニケーションから生まれるものだと思います。日本人はこの議論も苦手です。誰かが何かを言うと、それに対する反論をするのを避けたり、批判だけ行なって建設的な提案をしないとケースが仕事の現場でも見受けられます。

これも多様性を受け入れることと関連しているように思いますが、さらに相手を尊重するということが重要になると思います。相手の言っていることをしっかりと聞き、自分が賛成すること反対することを明確にして、賛成・反対の理由をしっかりと述べることが大切だと考えています。

PDCAだけではなくOODA

仕事を回す上で、当然PDCAを回すことが必要になるケースがありますが、この不確実な時代にそれだけでは立ち行かなくなります。そこで最近よく言われるのが、OODA(ウーダ)です。OODAループ(ウーダループ)といった使い方をします。

OODAとは、Observe(観察)、Orient(方向付け)、Decide(決心)、Act(実行)の頭文字を取ったものです。物事をよく観察して、どっちの方向に向かうかを判断し、やることを決めて速やかに実行するという枠組みです。PDCAが最初に計画するのに対して、OODAループでは観察から入り、大まかな方向づけをします。

不確実な時代ですから、長期的な計画を綿密に立ててもその通りになる保証はどこにもありません。それよりも今の状況を見て、ある程度の方向性を決めたらさっさと実行するという考え方です。今の時代にフィットしていると言えるでしょう。

スピード感

世の中はものすごいスピードで動いています。特にデジタルの世界は日進月歩どころか秒進分歩といったところでしょうか。何事もスピード感を持って動くことが求められます。前項で説明したOODAループとも関連しますが、とにかくある程度の方向性に基づいてまずは行動し、後から軌道修正すれば良いという考え方が必要になってきます。

今回の新型コロナ対策でも、国によって大きく差が出ています。台湾や韓国のように先手先手で対策を打った国と、アメリカやイタリアのように対策が後手に回った国では、その成果が全く違ってきています。特に新型コロナ対策のような有事の際には、従来のようにじっくりと計画を作るPDCAサイクルではなく、スピード感を持ってOODAループを回してゆくことが必要だと考えています。

この記事を書いていて、自分も「日本人は〜だ」といった枠組みにとらわれているところがあることに気づきました。私ももっと頭を柔らかくしないとイノベーションを起こせそうにありませんね。

今日はこれくらいにしておきましょう。ではまた。

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