2019年11月にある2つの指標が発表されました。一つは2019年冬のボーナスの支給額。もう一つは家計金融資産額。その結果だけ見ると、ボーナスは増えて、家計金融資産は減ったという不思議な現象が起きています。今回はこのことについて触れたいと思います。
2019年冬のボーナスの支給状況
2019年冬のボーナスの支給額から見てゆきましょう。皆さんの会社はボーナスは出ましたか?ボーナスをもらった人は昨年よりも増えましたか?2019年11月14日に経団連が発表した数値によると、大手企業のボーナスは昨年に比べて1.49%増加したとのことです。
経団連は14日、大手企業の年末のボーナス(賞与・一時金)妥結額の第1回集計を発表した。回答した12業種82社の平均は前年冬から1・49%増の96万4543円だった。第1回集計としては2年連続で過去最高を更新し、5年連続で90万円を超えた。
出典:読売新聞Webサイト
実際に経団連が発表した資料を見てみましょう。
対象となる企業は82社(製造業が77社、非製造業が5社)です。ただし東証一部上場で従業員500名以上の大企業のデータになります。この点は注意が必要です。
また、業種によっても違いが出ています。造船、自動車、建設などは昨年よりも増加していますが、非鉄・金属、機械金属、セメントなどは昨年よりも減少しています。経団連の特徴なのかもしれませんが、ここでは昭和に活躍した重厚長大産業がいまだに幅をきかせているようです。
さて、昨年よりもボーナス支給額が増えているという感覚は皆さんとは合っていますか?私はあまり実感がないように思います。以前の記事でもお伝えしましたが、厚生労働省が行なっている「各種世帯の1世帯当たり平均所得額の年次推移」調査では、毎年所得が減少しているという結果が出ています。
今回の記事のボーナスが増えたというのも、ごく一部の大企業のみの調査結果を発表しているに過ぎないと思っています。うがった見方をすると、政府と深いつながりのある経団連がアベノミクスの成功を裏付けるような発表をしているのでは、と思ってしまうくらいです。
金融資産の状況
それではもう一つの指標、家計金融資産額について見てゆきましょう。金融広報中央委員会が2019年11月18日に発表した結果によると、3年連続で家計の金融資産の平均額減少しているというものです。
金融広報中央委員会(事務局・日銀)が18日発表した2019年の「家計の金融行動に関する世論調査」によると、2人以上世帯が保有する預貯金や有価証券などの金融資産の平均額は1139万円で、18年の1174万円から減少した。マイナスは3年ぶり。理由は収入減が最も多かった。
出典:東京新聞Webサイト
3年連続で減少しているというのは、感覚的に合っているかもしれません。問題はその金額です。2019年の平均額は1,139万円という数字です。これも一般庶民の数字とはかけ離れているのではないでしょうか。ここにも平均値と中央値のマジックがあります。つまり、平均値を取ると少数の資産家の数字が色濃く出でしまい、多めになってしまうということです。
実際に金融広報中央委員会が発表した資料を見てみましょう。
確かに平均値は1,139万円と書いてあります。一方中央値を見てみると、419万円となっています。かなりの差がありますが、我々一般庶民にはこの419万円の方がしっくりくるのではないでしょうか。減少額を見てみると、平均値ではマイナス35万円なのに対して、中央値ではマイナス81万円となっています。やはり中央値の方が実態を表しているように見えます。
上記の記事にもありますが、金融広報中央委員会は日銀が事務局を務めています。ここにも政治色の匂いがして仕方がありませんが、そう感じるのは私だけでしょうか。
珍現象はなぜ起きるのか
さて、この記事のタイトルにもなっている「ボーナスは増えたけど資産は減った」という珍現象は、どこから来ているのでしょうか。
一言で言うと、数字のマジックです。まずボーナス支給額については、ごく一部の大企業の数値のみを計算しています。また、金融資産についても中央値ではなく平均値で発表しています。しかも多くの報道機関も中央値のことは全く触れていません。これでは、この発表を見た人がミスリードする可能性が大きくなってしまいます。
ただ多くの人は、発表された数字が自分の感覚とずれていることを分かっています。したがって、多くの人は違和感を持つことでしょう。
数字を見てやるべき事
それでは、このような経済指標が発表された時に我々は何をすべきでしょうか。やはり数字に違和感を持った場合は、自分でしっかりと調べてみることが必要だと思います。また、一つの指標を見るだけでなく、関連する他の指標を調べてみることも必要かもしれません。これによって、自分自身の理解も深まりますし、何が問題なのかも見えて来ることが多いと思っています。
そしてさらに大切なことは、数字の意味を理解したら自分で何かできるのかを考えてみるということです。国や政府のやることに対して文句を言うことは簡単です。しかしそれでは前に進みません。今の国会の与党と野党のやり取りを見ていてもそれは明らかですね。
そこで、あまり国や政府に頼ってばかりいるのではなく、このような状況で自分が何をしなければならないのか、ということを真剣に考えるということが重要だと思います。
ケネディ大統領の言葉に、「国があなたのために何ができるかを問うのではなく あなたが国のために何ができるかを問うてほしい。」というものがあります。つまりこの記事のテーマである自律ですね。自分で調べて、自分で考え、自分で行動を起こす。これが大切だと思います。
今日はこれくらいにしておきましょう。ではまた。
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